経済研究所
Economic Research Institute

小野﨑 保

小野﨑 保

(おのざき たもつ)

経済研究所研究所長

研究所長メッセージ

経済研究所の基礎構想

経済研究所の目的は、その名称が示すように、もともと経済学およびその周辺諸科学の研究を推進することにあったが、1990年代半ばにおける教養部改組および短期大学部の改組再編による教員所属の変更に照応して学部や大学院のカリキュラムの抜本的改正が行われたことに伴い、今日では、狭い意味での経済学分野を越えて、環境・情報・言語・文化を含む、幅広い分野の研究活動を包括的に支援する活動を行っている。このような経済研究所の活動領域の広がりは、教養部や短大の改組への対応を契機としていたとはいえ、ますます多様化し複雑化する現代社会の諸相と諸課題を、できるだけ広い学際的視野から総合的、立体的に解明することが要求される現代社会の客観的要請に沿う転換であったといえよう。

経済研究所の主な活動としては、①研究所員の個人研究および共同研究の助成、②研究所員が交替で、それぞれの現在の研究課題について報告し、討論しあう月例研究会の開催、③学外の専門家を招いて行う講演会の開催、④研究叢書の定期的刊行、などが挙げられる。こうした活動のなかでも、とりわけ重要なのは、1969年以来、今日まで継続している『立正大学経済研究所叢書』の刊行である。この叢書は、現在まで25巻が発行されているが、「研究叢書刊行の辞」に記されているように、「現実の多様さと変動に目を奪われることなく、その根底にある過去や現在の真実を探し求めることによって、将来の試練にたえうる成果を世に送り出す」ことを目指して、研究所員のその時々の研究成果を原則として、年1回、刊行するものである。

これまで刊行されてきた研究叢書のタイトルを一覧すれば、時代的には、中世から現代にいたるまで、地理的広がりでは、日本を含むアジアはもちろん、ヨーロッパ、アメリカをカバーし、また、分野的には、経済学の理論・方法論はもちろん、産業、農業、金融、財政、労働、地球環境、言語など、広範な分野を包摂する研究成果が集成されている。これらの研究叢書は、1969年刊行の第1号以来、毎号、国立国会図書館の東京本館に納本されている他、全国の大学図書館に納められている。すぐれた研究は、時代を超えて光彩を放つものである。われわれは先人から受け継がれたこのような財産を誇りとし、今後とも良質な研究成果を継続的に公刊していくことが経済研究所の主要な使命であると考えている。ただし、従来の叢書は所員個々人の研究成果を公刊するものが中心であったが、今後は、グローバル化のもとで多様化・複雑化の進展する現代社会の構造と諸問題の解明のために、個人研究とあわせて学際的な共同研究を意識的に助成し、その成果を公開していくことが求められているといえよう。