経済学部について
About Faculty of Economics

王 在喆

王 在喆

(おう ありよし)

経済学部長

学部長挨拶

経済学は高校までの課程では体系立てて習わないので、どのようなことを研究する学問なのか具体的なイメージが湧きにくいでしょう。経済学をひとことで言うならば、わたしたちが日々生活を営んでいる経済がどのような仕組みになっていて、どのように機能するか(あるいは、どのようなときに機能しなくなるのか)を研究する学問です。経済は社会のあり方の根幹に関わるので、経済問題をどう解決していくかによって将来の社会のあり方が左右されます。少し大袈裟かも知れませんが、このような意味で、経済学というのは「私たちがどこからやって来てどこへ向かおうとしているのか」について考える学問だといえるでしょう。人間は経済との関わりなしに生きていくことはできません。経済がどのような仕組みになっていて自分とどう関わっているのかを知らなければ、あたかも海図なしで人生という大海原を航海するようなものです。自分自身をよりよく知って豊かな人生設計を考えるためにこそ、経済学を学ぶ意義があるのです。

ところで、経済というのは実に複雑なシステムです。そこには多種多様な要素が存在し、それらが複雑に絡み合いながら相互作用をしています。システム全体を観察すると、無秩序な雑然とした状態から突然秩序が出現したり、その秩序があるとき突然消滅したりと、きわめて複雑な振る舞いを示します。システムに出現した秩序は、今度は個々の要素の振る舞いに影響を与え、要素どうしの相互作用を通じてシステム全体の振る舞いを変化させます。このように自己進化するシステムを「複雑系」と呼びます。複雑系における要素どうしの相互作用は一般に非線形(1+1が必ずしも2とならないような関係)なので、システム全体の振る舞いは、個々の要素の振る舞いを観察するだけでは決して理解することはできません。経済学は、複雑系としての経済が示す多層的・多面的な振る舞いがどのようなメカニズムによって生じるかを解き明かそうとする学問である、と言い換えることもできます。したがって、経済学はきわめて間口が広く、同時に奥行きが深い学問です。経済学の勉強を有意義なものにするためには、経営学、政治学、法律学といった周辺諸分野のみならず、哲学、数学、自然科学などさまざまな分野にわたる幅広い教養も必要とされます。狭い問題意識に凝り固まっていては、理解が一面的になり視野狭窄に陥ります。貪欲なまでの知的好奇心を持って、幅広い視点から経済を見る眼を身につけてもらいたいと切に願います。