立正大学経済学部での学び –浅子和美教授、池尾和人教授、吉川洋教授を迎えて-

立正大学経済学部での学び–浅子和美教授、池尾和人教授、吉川洋教授を迎えて-

立正大学経済学部には、日本の経済学を牽引している3名の先生―浅子和美教授、池尾和人教授、吉川洋教授―が就任しています。
この先生方の研究成果が、経済政策の立案に影響を与えてきたことは、どの経済学者も否定できないでしょう。
実際、新聞や雑誌で、または先生方のご著書で、存在を知っている方が多いかと思います。

■教授紹介

■インタビュー -立正大学で経済学を学ぶ方へ-

浅子和美教授、池尾和人教授、吉川洋教授にお集まりいただき、ご着任順にお話をうかがいました。

Q1ご専門は何で、前任校では、どの科目を教えていましたか?

浅子専門は「マクロ経済学の理論と日本経済の実証分析」としてきました。前任校では研究所に所属しており、教育は大学院生のみで、学部生との接点はありませんでした。

吉川マクロ経済学です。浅子先生と同様に、マクロ経済理論とその理論を実証する研究してきました。浅子先生は新古典派主流派の「マクロ経済学のミクロ的基礎」を主に用いていますが、経済理論に統計物理学を応用して「経済物理学」という独自の視点を取り入れた研究もしています。

池尾お二人はマクロ経済学をご専門にされていますが、私はミクロ経済学です。金融論、なかでも金融機構の役割に関するミクロ経済学的分析が専門ですが、より幅広く日本経済について考察するようになり、現在は金融論および日本経済論を専門にしています。

Q2なぜ立正大学にいらしたのですか?

浅子前任校で定年を迎え、もうしばらくアカデミックな仕事を続けようと考えているときに立正大学との縁ができました。仏教徒ですが宗派が異なるので大丈夫かなと気になりましたが、宗教色はほとんどなく、石橋湛山や過去に教鞭をとられた先生方、及び現在のスタッフを思い、次の定年までお世話になろうと思い、やってきました。その際には、後に吉川・池尾両先生が同僚になられるとは思ってもいませんでした。

吉川石橋湛山は私の尊敬するエコノミストです。石橋湛山は「日本のケインズ」と称され、戦後すぐに大蔵大臣に起用された人です。ケインズにまつわる本もいくつか出版してきました。また私が教えて戴いた先生方(大石泰彦、侘美光彦)も、かつて立正大学に在籍されました。浅子先生が既に在籍されてきたことも、大きかったですね。

池尾前任校の定年が早くて、もう少し大学の教師を続けたいと思っていました。その希望に応じて、立正大学が採用してくれたというのが基本です。ただ、私としては、私立大学は建学の理念が重要で、立正大学の湛山イズムに(積極財政主義というところは別にして、小日本主義といったところが)共感できるということ、ファカルティに知っている人(浅子さんや吉川さんがはじめとして)が既に何人かいたこと、および自宅から近くて通勤が便利だったということが、よかったと思っています。

Q3これまでのご経験から、立正大学経済学部の学生にはどのようなことを学んでいただきたいですか?

浅子ともかく自分で考えて、自主的に行動する学生になってほしいと思います。私が担当する日本経済論に関連しては、まずは日本や世界での日々の出来事に関心を持ってもらうのが一番です。その積み重ねが、社会へのパスポートとなるでしょう。

吉川自分で考え、行動するためには、論理的に理解することが大切です。日本経済の構造や動きを理解するためには、やはり、マクロ経済学は必要不可欠の分野でしょう。将来どのような職業につくにせよ日本経済を理解することは大事なことですから、マクロ経済学の基礎はしっかりと学んでもらえればと思います。

池尾私の金融論を含め、経済学部の様々な授業で日本経済を理解したら、次は、自分自身をどう経済の中で活かすかということになると思います。これからの日本経済には、技術革新が求められています。しかし、技術革新の動向を考えると、従来の人間の役割のうちAIによって置き換えられていく部分が拡大して行くと見込まれます。すると、人間の役割として残される部分の意義が相対的に拡大して行くことになるでしょう。そうした部分は、結局、自分の頭で考えるということにつながるものだといえます。それゆえ、自分の頭で考える力を高めることにつながる学習に注力してもらいたいと考えます。

経済社会を生き抜くためには、日本経済の現状を知り、どのような処方箋が書かれているのか、それがどのような影響をもたらすのかを常に考えることが求められます。人口減少、社会保障の増大、累積国債、非正規雇用といった言葉は、1990年代に入って経済の長期停滞が続くにつれ、広く認知されるようになった経済用語です。経済学を学ぶと、こうした言葉が表現するような日本の経済現状を自分自身で考えられるようになります。

現状だけでなく将来への不安を誰もが抱く時代ではないでしょうか。そこで、2016年11月16日に、立正大学石橋湛山記念講堂リニューアル記念として、シンポジウム『アベノミクスと日本経済』を開催し、浅子和美教授、池尾和人教授、吉川洋教授に登壇いただきました。

日本の経済は、バブル崩壊以降、「失われた20年」と言われる経済の長期停滞が続いています。実力があるのにそれが発揮できずに低迷しているということではなく、日本経済の実力が低下しています。税収が伸び悩む中、少子高齢化によって社会保障費が年々増加したため、国債が累積していっています。そこで、消費税を8%に変更して、今後10%にまで引き上げることになりました。雇用環境も、非正規雇用が4割にまで高まり、かつての日本の豊かさは感じにくくなっています。加え、東日本大震災も経験しました。

アベノミクスとは、こうした日本の厳しい経済状況を改善しようと、歴代内閣のアジェンダとしてずっと挙げられてきたものを、アベノミクスとしてもう一度取り組もうとしたものです。アベノミクスが実施され始めてから、円安が進むことで輸出企業を中心に企業収益が改善し、設備投資も改善、失業率も自然失業率といわれる水準まで低下しました。しかし、経済が改善したという実感が伴わないこともあり、アベノミクスへの厳しい評価も耳にします。

そこでシンポジウムでは、アベノミクスの3本の矢のうち、池尾先生には第1の矢の「大胆な金融政策」について、浅子先生には第2の矢の「機動的な財政出動」について、吉川先生には第3の矢の「成長戦略」を中心的にお話いただき、さらにアベノミクスへの評価と日本経済の見通しについてもディスカッションを行いました。

シンポジウムの詳しい内容は、こちらでまとめています。(こちらをクリック

専門用語も入っていますが、一般向けの公開講座の内容ですので、平易にお話がされています。ぜひ、経済と経済学の最前線に触れていただけたらと思います。 立正大学経済学部を志望されている高校生の皆さんは、難しいかもしれませんが頑張って読んでいただき、そんな3名の先生からどんな授業を受けられるか想像していただけたらと思います。