2010.01.06
昨年12月5日立正大学経済学部はユーラシア研究所と共催して、
スペシャルゲストに総合石油企業TOTAL 日本法人社長 Luigi Colantuoni氏をご招待いたしまして、
一学部一優策プロジェクト『ヨーロッパとアジアのエネルギー安全保障』を開催いたしました。
今回は、その際講演されました内容を公開いたします。
『激動するグローバル経済の中での中国エネルギー需給動向と戦略』
日本エネルギー経済研究所研究主幹、帝京大学経済学部講師
郭 四志
中国におけるエネルギー需給動向は、石油・エネルギーなど国際商品相場及び国際政治経済情勢に大きな影響を与えている。最近、世界的な金融危機に伴う経済低迷の中、中国など主要新興国の経済回復・成長に伴う石油・エネルギー需要の増加とさらなる拡大への期待感によって、国際原油価格は、昨年年末の30ドル台/バレルから70ドル台/バレルまでに高騰している。
目下、世界の一次エネルギーの消費量(113億トン)における2割近くは中国に占められている。しかも世界全体のエネルギー消費量増分の7割以上は、中国の需要増によりもたらされたものである。世界経済の不況のなか、世界のエネルギー消費量は2008年に前年比わずか1.7%の微増となっている。一方、中国の経済が比較的堅調に成長しており、BP統計により、エネルギー消費量は同7.5%増の20億トンとなっている。今後中国経済のさらなる成長に伴い、エネルギーの消費量はますます増大していく。世界の2番目のエネルギー消費大国である中国として、その国際石油・エネルギー市場への影響・インパクトは大きく、そのエネルギー需給動向と戦略はますます国際社会からの注目を集めることになる。
中国は2007年にドイツを抜き、米国、日本に次ぎ、世界の第3の経済大国となっており、さらに2010年に日本を超え第2位の経済大国になると見込まれている。遡って中国経済は1979年末から今日にかけて30年間年成長率約10%の高度成長を遂げていた。中国の高度成長パターンは、エネルギー・資源多消費型の重化学産業に依存したものであった。石油・エネルギーの生産量が莫大な石油・エネルギー消費増加量に追いつかなくなり、エネルギー需給ギャップが拡大している。
とりわけ1990年代に入って以降、中国は、経済の高度成長に伴い、1993年に石油純入国に転じ、エネルギー需給逼迫は、深刻化してきて、需給ギャップは1,800万トン、現在2億トン近くにまで拡大している。1990年代後半特に21世紀に入って以来、中国政府は経済成長を支えるエネルギーの安全保障・安定供給に対して強い懸念を感じ、エネルギー安全保障の面から危機感を募らせている。経済成長に必要不可欠となるエネルギーの確保、エネルギー需給ギャップを埋めるためにどのような政策・戦略をとっているのであるかが、興味深い。
最近、国際金融危機・世界経済の不況による金融資産・原油相場が下落する経済情勢の激変の中で、中国政府はロシア・中央アジア及び南米産油国との間では、各国のニーズに合わせて、融資と石油権益との交換、石油・エネルギーの長期的供給契約を交わすなど、新しいエネルギー国際戦略を展開している。
ますます活発化している中国エネルギー需給の動きと戦略は、国際エネルギー市場を大きく影響を与えていくことになる。中国はどのように経済成長に必要なエネルギーを賄うのか、経済・産業構造の変化に伴うその主要エネルギー源別の需給事情の変化の実態がどうなっていくかが、国際社会に注目されている。
近年、中国政府は、上述のボトルネックを克服、石油供給セキュリティ確保のために、様々な対応策・戦略を実施してきた。それは主に、①国内原油開発の促進、②海外原油ソースと輸入ルートの多様化、③海外自主開発の推進、④石油備蓄基地の創設、⑤石油代替・省エネへの取り組みなどである。なかでも、海外自主開発の推進、いわゆる海外資源の開発・確保戦略は、中国石油供給セキュリティの重要な位置に置かれている。中国石油企業はその国家戦略の下で、積極的に産油国・地域に進出し、国際市場に大きなインパクトを与え、国際社会の注目を集めている。
本報告では、石油・エネルギー需給逼迫という中国経済成長の主要なボトルネックを克服するための石油供給セキュリティにおける海外資源確保の戦略に焦点を当て、エネルギー需給動向及び石油需給ギャップ拡大等の海外資源確保活動の背景、戦略特徴を分析し、そのインパクト・問題点及び今後の戦略動向を検討することにする。
▲『ヨーロッパとアジアのエネルギー安全保障』メインページに戻る
