2010.01.06

『ヨーロッパとアジアのエネルギー安全保障』開催・レジュメ公開

昨年12月5日立正大学経済学部はユーラシア研究所と共催して、 スペシャルゲストに総合石油企業TOTAL 日本法人社長 Luigi Colantuoni氏をご招待いたしまして、 一学部一優策プロジェクト『ヨーロッパとアジアのエネルギー安全保障』を開催いたしました。
今回は、その際講演されました内容を公開いたします。

『世界と日本のエネルギー事情』
立正大学経済学部 教授
藤岡 明房

1.世界のエネルギー事情

(1)エネルギー消費
 2008年の主要国の主要エネルギーの消費水準は表1.のようになっている。この表から明らかなように、エネルギーとしては、石油が最も利用されており、次が石炭である。その後、天然ガス、水力、原子力と続いている。世界で最もエネルギーを利用しているのがアメリカで、次が中国になっている。3番目はロシアで、日本は4番目になっている。
 世界のエネルギー消費は、増加傾向を示していた。地域別に見ると、アジア地域の伸びが著しく、アメリカ地域も伸びている。それに対し、ヨーロッパとロシアは伸び率が低くなっていた。しかし、2008年には多くの国で消費量が減少した。

(2)原油
1)石油メジャーズ
 1970年代はじめまで石油市場をほぼ独占していたセブン・シスターズと呼ばれる国際石油資本が存在していた。フランス石油(CFP 現TOTAL)を加えてエイト・メジャーズと呼ばれることもあった。しかし、1970年代になると石油危機が生じ、産油国の政府が油田の国有化などを行い、セブン・シスターズの勢力は一時低下した。しかし、7社は4社に統合(エクソンモービル、シェブロン、BP、ロイヤル・ダッチ・シェル)することによって力を回復した。この4社にトタルとコノコフィリップスを加えた6社を新たにスーパーメジャーと呼んでいる。これとは別に、国営企業7社を新・セブン・シスターズと呼ぶこともある。
 国際石油資本が規模を大きくしているのには理由がある。石油は枯渇が心配されていることから分かるように、常に新しい油田の採掘を行う必要がある。しかし、油田の探索から始まり、油田の発掘には膨大なお金がかかる。したがって、大資本でない限り石油事業は行えないのである。

2)原油価格の乱高下
 原油価格は、2004年以降高騰してきた。それがピークを迎えたのが2008年7月であった。1バーレルあたり147ドルという高値を付けた。しかし、その後石油価格は下落し始め、2008年9月のリーマン・ブラザーズの経営破綻をきっかけに、さらに下落した。一時は、30ドル台まで下落したが、その後持ち直し1バーレル当たり70ドルから80ドルを推移している。この原油価格の乱高下の背景には、国際的な資金の移動を伴う投機的な動きがあった。
 原油価格はアメリカのニューヨークのWTIで決定される。WTIでの価格はアメリカの為替レートと密接に関連しており、アメリカに資金が集まりドル高になるとWTI価格も騰貴したのである(図2参照)。しかし、リーマン・ショック後のドル高の時には金融市場が機能不全に陥ったため、WTI価格は反応しなかった。
 金融市場の不安定化から、国際的な投機的動きはしばらく抑制されることになる。しかし、一時的に中断したBRICsをはじめとする新興国での経済の発展は、再び力を回復させている。そのため、原油をはじめとするエネルギーへの需要は伸びることになるので、原油価格だけでなくそれ以外のエネルギー価格も上昇することが予想される(図3)。

3)地球温暖化問題
 温室効果ガスの削減が、世界規模での課題になっている。そのためには、化石燃料の使用の削減あるいは禁止を行うか、原子力や新エネルギーの利用を増加させる必要がある。
 また、アメリカのオバマ政権は、「グリーン・ニューディール」を実施している。

3.日本のエネルギー

1)低いエネルギー自給率と高い原油依存率
 わが国のエネルギー自給率は、原子力を輸入とみなす場合は、わずか6.6%(2008年)になる。原子力を国産とみなしても16.3%(2008年)である。したがって、エネルギーの大部分を輸入に依存せざるを得ないという苦しい状況にある。エネルギーの輸入代金を確保できるだけの輸出を行わなければいけないことから、常に輸出超過になるような独特の貿易政策と為替政策を実施することになった。
 一次エネルギーの供給の中でも原油への依存度が46.4%になっており、依然として高い割合になっている。原子力発電所の事故が原因で、原子力の割合が低くなったことも影響している。

2)日本の最終エネルギー消費の推移
 わが国の最終エネルギー消費の推移は、2000年代に入ってから安定していたが、2008年には減少した。これは、原油価格の乱高下と世界同時不況の影響が大きい。
 わが国の一次エネルギーの総供給の推移を見てみると、2000年代には若干の増加であったが、2008年には減少した。一次エネルギーの中では、石油の利用が一番多く、以下、石炭、天然ガス、原子力、水力となっている。

3)地球温暖化対策
 2009年9月に誕生した鳩山内閣では、2020年時点で1990年比の温室効果ガス削減量を25%とすることを宣言した。これは、自民党時代の麻生政権が、2020年度に2005年度比で15%削減を唱えたことと比べると極めて厳しい数字になっている。したがって、鳩山政権は宣言を実現させるためには、大胆な政策を実施することが求められている。

4)新エネルギーの促進と原子力の見直し
 温暖化対策を実施するためには、新エネルギーの開発・利用の促進を図ることが必要である。しかし、新エネルギーの利用に関しては、2005年に太陽光発電への補助金を打ち切ったなどの政府の政策の失敗により、ゆがみが生じている。2009年度から太陽光発電の補助金は復活したが、新エネルギー全体は低調のままである。今後は、6割ぐらいの稼働率である原子力を9割の稼働率まで引き上げることが求められている。

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『世界と日本のエネルギー事情』
立正大学経済学部 教授 藤岡 明房
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